理想的な選挙が行われる理想的な世界

 201X年、昼下がりの団地に、選挙カーが止まった。団地妻たちは固唾を飲んで選挙カーを見つめる。今回の選挙は、公職選挙法改正により、選挙カーでの連呼が禁止になってからはじめての選挙だ。いったい、どのような戦略、搦め手が使われるのであろうか。
 候補者が選挙カーの上にあらわれる。マイクを持ち、大きくこう叫んだ。
「みなさんこんにちは、鳩山、鳩山ピジョンでございます! 続きはWEBで!」
 そこからは目にもとまらぬ早業、あっけにとられる団地妻たちをしり目に機材を片付け、ピジョンは後部座席にもどり、30秒以内に車は発進した。
 なるほど、続きはWEBでとは考えたものだ。なんとなく気になる。昼間はネトゲか昼ドラ三昧の団地妻も、今頃google先生にお伺いしているに違いない。きっと団地の共同光回線も重くなっているはずだ。
 

 そうこうしているうちに、次の選挙カーが到着した。youtubeにアップされたピジョンの政策ビデオを見るのに飽き、鬼女板を覗き始めた主婦たちがまた聞き耳を立てる。次は、いかなる戦略か。
 ピンポーン
 まさかであった。個別訪問である。主婦は狼狽し、パックしたままの顔でドアを開けた。主婦には政治がわからぬ。しかし、連呼の禁止は、当然個別訪問の許可につながることは理解していた。ここは、パックした顔で威嚇し、はやめに帰ってもらうほかない。いわば、このパックは、日夜バーゲン品を求めてフン族ばりに大移動する、戦闘民族としての誇りなのだ。
候補者・ASO「すみません、田中アッティラさんのお宅ですか」
田中「そうですが」
ASO「選挙のお願いに参りました、どうか、このわたしを、男にしてやってください」
田中「ま、ま。じゃああなた、そのお歳で、まだ、童貞」
ASO「いや、そういうことではありません、男にするというのは」
田中「まあ、おあがりなさいな、ほらっ、ほら」
ASO「あっ、いや、わたくしは、そんな、」
田中「ガハハ!ウブいのう!」
ASO「ひっ、あっ、ま、まさか、最初の団地妻というのは、この伏線」
田中「今頃気づいても遅い、個別訪問には、このようなリスクも伴うのだぞ、ドアを開けた瞬間、押し倒されても文句は言えんのだ」
ASO「だからわたしは連呼型の選挙のほうがよかったんだ、民主党さえ勝たなければ、あ、こんなことには」
田中「ふふっ、あなた、覚悟して来てる人ですよね、ジョジョを読んでいる漫画政治家のあなたなら覚悟してきてるはずだ」
ASO「そ、それは、あっ、あっ、あああああああっ、ズボンを、」


続く(たぶん)
参考:http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/news2/national/20090821-OYT1T00940.htm
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/news2/national/20090821-OYT1T00940.htm